☆マリーズ・シモン-プラネルのフランス文化事情☆

第1回 「聖ニコラ(サンタクロース)?それともペール・ノエル?」

BONJOUR。マリーズ・シモン-プラネルです。
私は以前、日仏学院のフランス語講師として数年間東京に住んでいました。フランスに帰国してからは、自宅にてフランス語集中講座と朝昼2食付のホームスティを主催しています。「フランス語を正しく話す」、フランス式の生活や考え方をじっくり学べる講座として、多くの日本人学生を受け入れて来ました(HP: www.chez-la-professeur.com)。

今回から、日本とフランスの文化の違いを中心に、皆さんがフランスを訪れる際に参考になる様なアドバイスを掲載していきたいと思います。
初回のテーマは「クリスマス」です。日本の皆さんもクリスマスと言えば直ぐサンタクロースを連想されますよね?ここではフランスにおける「サンタクロース」の存在についてお話しましょう。

聖ニコラ(サンタクロース)?それともペール・ノエル?

フランスでは、日本でお馴染みのサンタクロースに当たる存在を、ペール・ノエル(クリスマスのパパ)と言います。赤と白のコスチュームにトナカイのそりで登場する、あの人物です。フランスの子供達が歌うお馴染みのクリスマスソングにも「プティ・パパ・ノエル」と言う有名なものがあります。
ところが、少々ややこしいのですが、宗教上サンタクロースと称されるのは実は聖ニコラという聖人なのです(サンタクロースとは聖ニコラのドイツ語訳です)。

ヨーロッパには、聖ニコラ(サンタクロース)、ペール・ノエル双方にまつわる祝日がありますが、同じ日ではありません。何より、この聖ニコラとペール・ノエルは同一人物ではありません。聖ニコラは実在しましたが、ペール・ノエルは、日本で知られているサンタクロースと同じく想像上の人物です。

1聖ニコラとは??

聖ニコラは西暦400年代にローマカトリック教会で最も有名で重要な聖人の1人とされていました。彼は一時ローマ帝国から迫害された事もあったのですが、常に子供たちへの博愛、保護を推進した事から、「幼き者たちの救世主」と崇められました。

聖ニコラは今から約1600年前の12月6日に逝去しました。西暦12世紀以降は、北ヨーロッパ諸国とフランスのアルザス・ロレーヌ地方でのみ、12月6日が彼にまつわる祝日、聖ニコラ(サンタクロース)の日となりました。

その日、聖ニコラは教会最高首長の装いに身を包み、ロバの背に乗って、賢い子たちにオレンジやクリスマス用のケーキを配って歩くと言われています。ですが、聖ニコラの側に全身黒装束の「ペール・フエタン(鞭打ちの父)」がより添っていて、悪い子達を鞭で打って歩くのです。日本の東北地方に伝わる「なまはげ」の様な存在でしょうか?いづれにしてもこの祝日は、聖ニコラが愛した「幼き者」である子供たちのための祝日なのです。

北ヨーロッパ諸国やアルザス・ロレーヌ地方の子供達は、この聖ニコラの祝日とクリスマスイブ(12月24日)と、2度もプレゼントが貰えるので大喜びです。聖ニコラの日には聖ニコラを象どったビスケットやケーキ等のお菓子、クリスマスの日にはお菓子以外の玩具等のプレゼントを受け取るのが一般的な慣習です。

2.ペール・ノエルとは??

ペール・ノエルは聖ニコラよりずっと若く(!)、彼の伝説は1821年、アメリカの牧師レヴェレンド・ムーアが彼の子供たちに語った物語が始まりと言われています。勿論、ペール・ノエルは彼が創造した人物です。

12月24日、ペール・ノエルは赤と白のコスチュームを着て、8頭立てのトナカイ(その内の一頭は赤鼻のトナカイさん!有名な歌の歌詞の通り、暗い夜道の道案内役です。)の馬車で空を駆け巡り、各家の煙突から子供たちにプレゼントを届けに来る、というあまりにも有名なお話です。

3.日本では何故ペール・ノエルがサンタクロースなのか?

17世紀、オランダ人移民達が現在のアメリカのニューヨーク市を興した際、彼らの母国の習慣に基づいて12月6日の聖ニコラ(サンタクロース)の祝日を祝っていました。ところが間もなく、敬虔なキリスト教徒であった彼らは「幼き者たち」のための祝日には、「神の子」であるイエス・キリストの生誕日12月24日の方が望ましいと判断し、12月6日に代わりに12月24日を祝日としました。

そして上記のムーア牧師創作の物語を発祥として、1821年以降アメリカでは想像上の人物であるペール・ノエルが聖ニコラ(サンタクロース)となり、実在の聖人と想像上の人物が完全に混同されてしまいました。1931年以降はコカコーラ社の大々的な商業キャンペーンの結果、日本を含め世界中にサンタクロース伝説が伝わり、クリスマスの象徴となりました。今でも冬にはサンタクロースのイラストが載ったコカコーラ缶が出回っていますよね。


ともかく、フランスでは「サンタクロース」と言っても通じません!ペール・ノエル、若しくはパパ・ノエルと言って下さいね。


2005年1月


Maryse Simon, professeur de FLE (français langue étrangère), a enseigné au Japon. Forte de son expérience, elle propose un programme d’immersion en Bourgogne, à son domicile, ainsi qu’elle l’avait fait pendant de nombreuses années au cœur de Paris.

Au Japon, inscriptions et renseignements auprès de l'École FL
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マリーズ・シモン-プラネル:元日仏学院フランス語講師。現在は日本での講師経験をもとに、ブルゴーニュにある17世紀に作られた元修道院の一角で、語学学校兼ホームステイプログラムを行っている。
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